コロ(coro)の小説公開

 

【掌編】仲間 火星 始まり【三題噺】

 宇宙の始まりはいつなんだろうか?

 そんな壮大な思いを抱き始めたのは何歳の時だったのかももう覚えていない。

 そして、僕達はそんな疑問を抱いたまま生まれ育った地球で仲間を集い、明日、火星へ飛び立つ。

 壮大な思いはまだ解明されていないから、僕達の目で見てみたいのだ。

 

 宇宙の大きさとその偉大さを。

-完-

【掌編】バナナ ゴリラ 伝説【三題噺】

 私はゴリラがバナナを好むという習慣から何か得られるような気がした。

 それはバナナが我々人類が生まれる前から存在していた。

 それを踏まえるとバナナは人類がここまで進化するための伝説の食べ物なのかもしれないということだった。

-完-

【短編】ブランコ【小説】

 

 少年は今日も自転車を漕ぐ。

 行き着く場所はいつも同じ。

 隣町にある公園だ。

 そこで、彼はブランコに乗るのが日課になっている。

 今日もブランコに乗るために自転車を漕ぐ。

 空は薄い青空に雲が少しかかっている。

 

 明日は雨だろうか?そんなことを気にしながら進む。

 いつもブランコに乗りながら考えることは同じだ。

 何か大きな事件でも起きないかと考える。

 一つも楽しくワクワクすることがないし、ドキドキしたスリルもない日常に飽き飽きしていた。

 ブランコに乗っている時間は妄想の時間だ。

 今日もいつもと変わらず妄想にふける。

 何か起こったら良いのにと思いながら。

 

「ひったくりよー」

 どこか近くで声がする。

 僕は自転車に飛び乗り、その声の元まで駆けつける。

 その場には一人のおばさんが倒れていた。

「あの人、私からバッグを奪っていったの!」

 おばさんは犯人が走っていった方へ向いて指差した。

 僕はその指の方へ自転車を漕いでいく。

 僕の愛車が火を噴くように駆け抜ける。

 

 そうして、交差点に差し掛かった時、僕は犯人の曲がりそうなところを想像する。

 右に行けば商店街、左に行けば人気の少ない道に出る。

 多少、この辺の地理に詳しくないと犯行には及ばないと思った僕は左に進むことにした。

 いまだに犯人と思わしき人物とは会ってない。

 犯行現場からさほど離れていない公園だったのにおかしいと思った僕は、商店街に潜んでいるんじゃないかと勘ぐった。

 しかし、もし、商店街に行っていれば途中で誰かに捕まっているだろうと思った。

 

 そこで、僕はこのまま犯人を捜すことにした。

 しかし、行っても行っても犯人と遭遇しない。

 気がつけば隣町まで来ていた。

 おかしいと思い、交差点まで戻ることにした。

 さっきのおばさんはどうしたんだろう? と不思議に思ったが、とりあえず商店街の方へと足を伸ばすことにした。

 愛用の自転車も僕と一体になり、スピードに乗ってくる。

 

 商店街は夕方ということもあってか、人が思ったより少なかった。

 でも、怪しい人はすぐに分かるはずだと思い、僕はひたすら自転車を漕ぐ。

 そして、ようやく商店街が終わる地点までやって来ると同時に商店街の人に尋ねてみた。

 

「こっちの方にひったくりが来ませんでしたか?」

「あぁ。ひったくりだーという声は聞こえたが、こっちには来てないよ」

 心優しそうなおじさんは僕にこういった。

 すると、犯人はどこへ行ったのだろうか。

 交差点に着くまでに細い路地にでも入ってしまったのではないかと考えた。

 僕は交差点に行くまでに点在する細い路地に行ってみることにした。

 しかし、自転車に乗りながらそれらしき人を探したが、見つからなかった。

 

「どういうことなのだろうか?」

 僕は交番へ行って事情を説明することにした。

 交番に着くと三人の刑事さんが居た。

 

 僕は事情を話さそうと交番に入ると、突然手をもっていかれた。

「君がさっき起こったひったくりの犯人だな」

 刑事さんは僕にこう言った。

 僕は身におぼえが無いし、どうして自分が追っている犯人にされるのか分からなかった。

「刑事さん、違いますよ。僕はその犯人を捕まえようと追っていたんです」

 僕はここに来るまでの行動を話した。

「へぇ。うろうろと逃げて結局、自首しにきたんだな。それを見てみろ」

 刑事さんは僕の自転車のかごに入っていたバッグを取り出した。

「あ! それは……」

 

 僕が探していたバッグはなんと自転車のかごに入っていたのだった。

 いったいどこで入れられたのだろうか。

 全く皆目見当がつかなかった。

 

 そこで、ふと、我に返った僕は自転車のかごに何も入っていないことを確認し、ブランコを降りた。

 何事も無く、毎日こうしてブランコに乗って妄想にふけるのが僕の日課である。

 

‐完‐